山形地方裁判所 平成8年(ワ)250号 判決 1998年12月21日
呼称
原告
氏名又は名称
イエロープランこと 鈴木直一
住所又は居所
秋田県秋田市保戸野新川向三九番二号 シンワビル一階
代理人弁護士
村山永
呼称
被告
氏名又は名称
株式会社綜合教育センター
住所又は居所
山形県山形市新開二丁目六番三号
代理人弁護士
武田正男
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は原告に対し、二四八万六七七六円及びこれに対する平成八年三月二六日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、被告が発行する月刊誌「カールック」に、別紙目録一記載の謝罪広告を、別紙目録二記載の形式で一回掲載せよ。
第二 事案の概要
本件は、被告が被告発行の中古車情報雑誌に原告が著作権を有する地図、イラスト等を無断転載して原告の著作権を侵害したとして、被告に対し、損害賠償金の支払と謝罪広告の掲載を求めた事案である。
一 争いのない事実等
1 原告は秋田県内において中古車情報雑誌「オートステージ」(毎月二〇日発行)を発行し、被告は秋田県及び山形県内において中古車情報雑誌「月刊カールック」(毎月二五日発行)を発行している(争いがない)。
2 原告は右「オートステージ」誌に、別紙一覧表(1)記載のとおり、地図、イラスト等(以下「(1)の地図」という。)を掲載した(甲一の2・3、二の2、三の2、五の2)。
3 被告は右「月刊カールック」誌に、別紙一覧表(2)記載のとおり、地図、イラスト等(以下「(2)の地図」という。)を掲載した(甲六の2、七の2、八の2、九の二、一〇の2・3、一一の2・3、一二の2、一三の2、一四の3ないし5、一五の2・4)。
二 争点
1 (1)の地図は著作物に該当するか。
(1) 原告の主張
(1)の地図は、いずれも事業所の案内図であるが、限られたスペースで、当該場所を知らない顧客に目的地を可能な限りわかりやすく示すために、目標となる建物、交差点、幹線道路等を適宜取捨選択し、全体として相当程度簡略化して作成されたものであり、目標となる建物の取捨選択や全体の構図の決定には著作者の個性が反映しており、十分創作性を有し、著作権法上の著作物に該当する。
(2) 被告の主張
地図は地形を図形によって表現しかつ諸種の記号をその図形内に記入したもので学術的要素を備えているかどうかにより著作物性が判断されると解すべきところ、(1)の地図は、誰が作成しても同一の内容を表現するものであって各種素材の選択、配列、表現に創作性の認められる余地はなく、著作権法上の著作物に該当しない。
とくに、別紙一覧表(1)記載五のイラストについては、単に抽象的な編集方法というアイディアがあるに過ぎず、著作物に該当しない。
2 原告が(1)の地図の著作権者か。
(1) 原告の主張
原告が(1)の地図を現実に作製したのであるから、原告が(1)の地図の著作権者であり、原告は、(1)の地図の著作権を第三者に譲渡したこともない。
(2) 被告の主張
(1)の地図の著作権者は、発注者である訴外有限会社佐藤モーターサイクル(以下「佐藤モーターサイクル」という。)等であって、原告ではない。
仮に、原告が(1)の地図の著作権を有していたとしても、原告が佐藤モーターサイクル等の発注者からデザイン料の支払を受けて広告デザイン等を引き渡したことによって、(1)の地図の著作権は発注者に移転した。
3 被告が(2)の地図を掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したか。
(1) 原告の主張
(1)の地図と(2)の地図の対応する地図等を対比すると、(2)の地図は(1)の地図を模倣して作製されたことは明白である。
したがって、被告が(2)の地図を掲載したことにより、原告は、氏名表示権、同一性保持権及び複製権を侵害された。
(2) 被告の主張
(1)の地図と(2)の地図の対応する地図等は道路の表現方法等について差異があり、被告が(2)の地図を独自に作製したもので、(2)の地図は、(1)の地図とは別の思想、感情の創作的表現物である。
なお、原告は氏名表示権の侵害を主張するが、本件は、注文者の販売店の所在の地図等を雑誌に掲載して配布するという著作物の利用目的、態様から見て、著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときに該当し、著作者名の表示を省略できる場合である(著作権法一九条三項)。
また、原告は同一性保持権の侵害を主張するが、本件は、注文者の販売店の所在の地図等を雑誌に掲載して配布するという著作物の利用目的、態様から見て、やむを得ないと認められる改変に該当する(著作権法二〇条二項四号)。
4 原告の損害について
(1) 原告の主張
ア 著作者人格権侵害による損害 一九〇万円
原告は、著作者人格権を侵害され、多大の精神的苦痛を被った。これを慰謝するには、別紙一覧表(1)記載一ないし四の地図の無断転載一回につき一〇万円(合計一四〇万円)、同一覧表(1)記載五の広告全体の無断転載につき五〇万円が相当である。
イ 著作財産権侵害による損害 八万六七七六円
「月刊カールック」誌は定価二五〇円で毎号少なくとも三万部刊行され、被告はその売上七五〇万円の七〇パーセントにあたる五二五万円の利益をあげた。原告の著作物を無断転載した「月刊カールック」誌は一〇冊、合計九六八頁であり、そのうち原告の著作物の掲載部分は一六頁でその割合は一・六五パーセントであるから、原告に八万六七七六円の損害が生じたと推定される。
ウ 弁護士費用 五〇万円
(2) 被告の主張
原告の主張事実は否認する。
第三 判断
一 争点1について
1 前記争いのない事実等及び証拠(甲一の1ないし3、二の1・2、三の1・2、五の1・2、原告本人)によれば、以下の事実を認めることができる。すなわち、
(1) 原告は、平成七年三月以降毎月二〇日、秋田県内において、中古車情報雑誌「オートステージ」を発行していた。
(2) 原告は、平成七年五月ころ、佐藤モーターサイクルの依頼により、「オートステージ」誌上に佐藤モーターサイクルが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、佐藤モーターサイクルの桜店、卸町店及び割山店の所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」六月号に掲載した。なお、右桜店の案内図には桜店の表示の他に横山金足線、秋銀桜支店及び桜ゴルフ練習場の記載があり、右卸町店の案内図には卸町店の表示の他に国道一三号線、茨島交差点、仁井田、ヤマキ及び卸団地の記載があり、右割山店の案内図には割山店の表示の他に免許センター、警察学校及び秋田信金割山支店の記載がある。
(3) 原告は、平成七年五月ころ、訴外株式会社マツダアンフィニ秋田(以下「アンフィニ秋田」という。)の依頼により、「オートステージ」誌上にアンフィニ秋田が販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店及び大館店の所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」六月号に掲載した。なお、右本店の案内図には本店の表示の他に新国道、山王、土崎、操車場、ジャンボセンター、モスバーガー、マクドナルド、土信、陸連、泉大畑バス停前及びガソリンスタンド二か所の記載があり、右本荘店の案内図には本荘店の表示の他に国道七号線、秋田、酒田、旧道本荘市内、秋田ダンボール、ガソリンスタンド、近野部品、つるまい石脇店及びパチンコニューセブンの記載があり、右能代店の案内図には能代店の表示の他に旧七号線、国道七号線二か所、秋田、市内、大館、ガソリンスタンド、江戸川入口バス停及び「ゴリラの看板が目印」の記載があり、右大館店の案内図には大館店の表示の他に一〇五号線、大館市内、比内町、鹿角・十和田、えんとつ、ブックスひびき、広域センター及びパチンコの記載がある。
(4) 原告は、平成七年六月ころ、訴外有限会社カーグランドルマン(以下「カーグランドルマン」という。)の依頼により、「オートステージ」誌上にカーグランドルマンが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、カーグランドルマンの本社所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」七月号に掲載した。なお、右本社の案内図には本社の表示の他にR一三、臨海バイパス、秋田南インター、山王十字路、秋田大橋、秋田駅、天下一番、タケダスポーツ、秋田SATY、ルマン展示場、ハローワーク及び茨島ガーデンの記載がある。
(5) 原告は、平成七年八月ころ、訴外有限会社オートスポーツサム(以下「オートスポーツサム」という。)の依頼により、「オートステージ」誌上にオートスポーツサムが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、オートスポーツサムの本社所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」九月号に掲載した。なお、右本社の案内図には本社の表示の他に東通り、WEロード、秋田大学、手形陸橋、秋田銀行、とん太、関根屋、北郡銀行、横山金足線及び明田地下道の記載がある。
(6) 原告は、平成八年二月ころ、アンフィニ秋田の依頼により、「オートステージ」誌上にアンフィニ秋田が販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を桜の木をあしらったイラストの中に表示するとともに、アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店、大館店及び大曲店の所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」三月号に掲載した。なお、右本店、本荘店、能代店及び大館店の案内図には右各店舗の表示の他に前記(3)と同様の記載があり、右大曲店の案内図には大曲店の表示の他に一〇五号線、国道一三号線、市内、秋田、本荘、横手、秋田、電巧堂、ガソリンスタンド、メイク及びメーノス大曲店の記載がある。
以上の事実を認めることができる。
2 ところで、地図は、地球上の現象を所定の記号によって客観的に表現するに過ぎないものであって、個性的表現の余地が少ないということができる。しかしながら、各種素材の取捨選択、配列及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、経験等が重要な役割を果たすものであるから、なおそこに創造性の表出があるというべきである。
これを本件について見るに、前記1認定のとおり、原告は広告依頼主の店舗の案内図を作成するに際し、目標となる道路、建物等を取捨選択して相当程度簡略化してこれを作成したもので、右地図については、右目標となる物の選択あるいは全体の構成を決定するに当たり作者の個性が反映し、創造性を有しているということができるから、著作権法上の著作物に該当するというべきである。
3 なお、原告は、原告が別紙一覧表(1)記載五の広告全体につき著作権を有する旨主張し、右広告のうち店舗の案内図について著作権法上の著作物に該当することは前述のとおりであるが、右広告のうちその余の部分、すなわち、中古車の写真、車種名及び販売価格等を桜の木をあしらったイラストの中に表示した部分については、単なる表示方法の工夫に過ぎず、著作権法二条一項一号所定の「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいえないから、著作権法上の著作物に該当するとはいえない。
二 争点2について
1 前記一、1認定のとおり、原告が別紙一覧表(1)記載の佐藤モーターサイクル他の各店舗の案内図を作製したのであるから、原告が右案内図の著作権者であるということができる。
被告は、発注者である佐藤モーターサイクル他が右案内図の著作権者である旨主張するけれども、右案内図を作製したのは原告であることは前述のとおりであるから、被告の右主張は理由がない。
2 被告は、原告が(1)の地図の著作権を発注者である佐藤モーターサイクル他に移転した旨主張するが、右主張事実を認めるに足りる証拠はない。
三 争点3について
1 前記争いのない事実等及び証拠(甲六ないし九の各1・2、一〇の1ないし3、一一の1ないし3、一三の1・2、一四の1・3ないし5、一五の1・2・4、被告代表者本人)によれば、以下の事実を認めることができる。すなわち、
(1) 被告は、毎月二五日、秋田県及び山形県内において、中古車情報雑誌「月刊カールック」を発行していた。
(2) 被告は、平成七年六月ころ、佐藤モーターサイクルの依頼により、「月刊カールック」誌上に佐藤モーターサイクルが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、佐藤モーターサイクルの桜店、卸町店及び割山店の所在地を示す案内図を作成し、これを「月刊カールック」六月号ないし一二月号に掲載した。なお、右桜店の、案内図には桜店の表示の他に横山金足線、一三号線、大学病院、桜ゴルフ練習場、秋銀桜支店、チコマート及びヤマニスタンドの記載があり、右卸町店の案内図には卸町店の表示の他に国道一三号線、茨島交差点、仁井田、ヤマキ、卸団地、人形会館及びコジマ電気の記載があり、右割山店の案内図の案内図には割山店の表示の他に免許センター、警察学校及び秋田信金割山支店の記載がある。
(3) 被告は、平成七年一〇月ころ、アンフィニ秋田の依頼により、月刊カールック」誌上にアンフィニ秋田が販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店、大館店及び大曲店の所在地を示す案内図を作成し、これを「月刊カールック」一一月号、一二月号、平成八年一月号ないし三月号に掲載した。なお、右本店の案内図には本店の表示の他に新国道、山王、土崎、操車場、ジャンボセンター、モスバーガー、マクドナルド、土信、陸連、泉大畑バス停前及びガソリンスタンド二か所の記載があり、右本荘店の案内図には本荘店の表示の他に国道七号線、秋田、酒田、旧道本荘市内、秋田段ボール、ガソリンスタンド、近野部品、つるまい石脇店及びパチンコニューセブンの記載があり、右能代店の案内図には能代店の表示の他に旧七号線、国道七号線二か所、秋田、市内、大館、ガソリンスタンド、江戸川入口バス停及び「ゴリラの看板が目印」の記載があり、右大館店の案内図には大館店の表示の他に一〇五号線、大館市内、比内町、鹿角・十和田、えんとつ、ブックスひびき及びパチンコの記載があり、右大曲店の案内図には大曲店の表示の他に国道一〇五号線、国道一三号線、市内、秋田、本荘、横手、電巧堂、ガソリンスタンド、メイク及びユーノス大曲店の記載がある。
(4) 被告は、平成八年二月ころ、カーグランドルマンの依頼により、「月刊カールック」誌上にカーグランドルマンが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、カーグランドルマンの本社所在地を示す案内図を作成し、これを「月刊カールック」三月号及び四月号に掲載した。なお、右本社の案内図には本社の表示の他にR一三、臨海バイパス、秋田南インター、山王十字路、秋田大橋、秋田駅、天下一番、タケダスポーツ、秋田SATY、ルマン展示場、ハローワーク及び茨島ガーデンの記載がある。
(5) 原告は、平成八年二月ころ、オートスポーツサムの依頼により、「月刊カールック」誌上にオートスポーツサムが販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を表示するとともに、オートスポーツサムの本社所在地を示す案内図を作成し、これを「月刊カールック」三月号に掲載した。なお、右本社の案内図には本社の表示の他に東通り、WEロード、秋田大学、手形陸橋、秋田銀行、とん太、関根屋、北郡銀行、横山金足線及び明田地下道の記載がある。
(6) 原告は、平成八年三月ころ、アンフィニ秋田の依頼により、「月刊カールック」誌上にアンフィニ秋田が販売する中古車の一頁広告を掲載することとし、中古車の写真、車種名及び販売価格等を桜の木をあしらったイラストの中に表示するとともに、アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店、大館店及び大曲店の所在地を示す案内図を作成し、これを「オートステージ」三月号に掲載した。なお、右各店舗の案内図には右各店舗の表示の他に前記(3)と同様の記載がある。
以上の事実を認めることができる。
2 右の事実に基づき、被告が(2)の地図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したか否かについて、検討する。
(1) 佐藤モーターサイクルの桜店、卸町店及び割山店の案内図について
右各店の案内図につき、(1)の地図と(2)の地図とを対比すると、前記一、1、(2)記載の(1)の地図の道路及び目標物等の選択、記載方法と前記三、1、(2)記載の(2)の地図のそれとは相当程度類似していること、(1)の地図が「オートステージ」平成七年六月号に掲載され(2)の地図が「月刊カールック」平成七年七月号ないし一二月号に掲載されたこと等を考慮すると、被告が(1)の地図を模倣して(2)の地図を作製した疑いを生ずる。
しかしながら、(1)の地図において道路を表示するのに道路下側あるいは右側に影を付けているのに対し、(2)の地図において道路を表示するのに道路下側あるいは右側に二重線を付けていること、(2)の地図のうち、桜町店の案内図においては(1)の地図にない一三号線、大学病院及びヤマニスタンドの記載があり、卸町店の案内図においては(1)の地図にない人形会館、卸団地及びコジマ電気の記載があること(甲一の2、乙六の2、七の2、八の2、九の2、一〇の3、一一の2)が認められるのであって、(1)の地図と(2)の地図にある程度の相違がある。
元来、右各店舗の案内図は、道路、目標物等を記載して店舗の所在場所を示すものであるから、作製者が異なったとしても、ある程度類似のものとなることは避けられないところである。このことは、佐藤モーターサイクルが平成四年三月一八日付秋田さきがけ新聞に掲載した広告中の右桜店の案内図には桜店の表示の他に横山金足線、手形山、国道一三号線、桜ゴルフ、流通大及び増森の記載があり(乙一八)、佐藤モーターサイクル代表者の名刺の裏に書かれている各店舗の地図のうち、右桜店の案内図には桜店の表示の他に金足▲楢▼山線、秋銀桜支店及び至ゴルフ練習場の記載があり、右卸町店の案内図には卸町店の表示の他に国道一三号線、至茨島交差点、至仁井田、ヤマキ及び卸団地の記載があり、右割山店の案内図には割山店の表示の他に至免許センター、至警察学校及び秋田信金割山支店の記載がある(乙一九の一・2)ことを認めることができるのであって、右は原告作製の(1)の地図の右各店舗の案内図の記載と大同小異であることからも明らかである。
以上によれば、被告が(2)の地図のうち、佐藤モーターサイクルの桜店、卸町店及び割山店の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないというべきである。
(2) アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店及び大館店の案内図について(別紙一覧表(1)記載二の分)
右各店の案内図につき、(1)の地図と(2)の地図とを対比すると、前記一、1、(3)記載の(1)の地図の道路及び目標物等の選択、記載方法と前記三、1、(3)記載の(2)の地図のそれとは相当程度類似していること、(1)の地図が「オートステージ」平成七年六月号に掲載され(2)の地図が「月刊カールック」平成七年一一月号ないし平成八年三月号に掲載されたこと等を考慮すると、被告が(1)の地図を模倣して(2)の地図を作製した疑いを生ずる。
元来、右各店舗の案内図は、道路、目標物等を記載して店舗の所在場所を示すものであるから、作製者が異なったとしても、ある程度類似のものとなることは避けられないところである。このことは、アンフィニ秋田が平成六年七月七日付、同月一六日付、同年八月二〇日付及び平成七年一月七日付の秋田さきがけ新聞に掲載した広告中の右本店の案内図には本店の表示の他に新国道、至山王、至土崎、至操車場、ジャンボセンター、モスバーガー、マクドナルド、土信、陸運支局連、泉大畑バス停前及びガソリンスタンド二か所の記載があり、右本荘店の案内図には本荘店の表示の他に国道七号線、至秋田、至酒田、旧道本荘市内、秋田段ボール、ガソリンスタンド、近野部品、つるまい石脇店及びパチンコニューセブンの記載があり、右能代店の案内図には能代店の表示の他に旧七号線、国道七号線二か所、至秋田、至市内、至大館、ガソリンスタンド、江戸川入口バス停及び「ゴリラの看板が目印」の記載があり、右大館店の案内図には大館店の表示の他に一〇五号線、至大館市内、至比内町、鹿角・十和田、えんとつ、ブックスひびき、広域センター及びパチンコの記載がある(乙一三の1ないし4)ことを認めることができるのであって、右は原告作製の(1)の地図の右各店舗の案内図の記載と大同小異であることからも明らかである。
以上によれば、被告が(2)の地図のうち、佐藤モーターサイクルの桜店、卸町店及び割山店の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないというべきである。
(3) カーグランドルマンの本社の案内図について
右本社の案内図につき、(1)の地図と(2)の地図とを対比すると、前記一、1、(3)記載の(1)の地図の道路及び目標物等の選択、記載方法と前記三、1、(3)記載の(2)の地図のそれとは相当程度類似していること、(1)の地図が「オートステージ」平成七年七月号に掲載され(2)の地図が「月刊カールック」平成八年三月号及び四月号に掲載されたこと等を考慮すると、被告が(1)の地図を模倣して(2)の地図を作製した疑いを生ずる。
しかしながら、(1)の地図においては道路部分を白抜きで表示しているのに対し、(2)の地図においては道路部分を黒く表示していること、(1)の地図において目標物として表示しているハローワーク及び秋田SATYの位置と、(2)の地図において目標物として表示しているハローワーク及び秋田SATYの位置とに若干のずれがあること(甲二の2、一四の3・4)が認められるのであって、(1)の地図と(2)の地図にある程度の相違がある。
元来、右各店舗の案内図は、道路、目標物等を記載して店舗の所在場所を示すものであるから、作製者が異なったとしても、ある程度類似のものとなることは避けられないところである。
以上によれば、被告が(2)の地図のうち、カーグランドルマンの本社の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないというべきである。
(4) オートスポーツサムの本社の案内図について
右本社の案内図につき、(1)の地図と(2)の地図とを対比すると、前記一、1、(4)記載の(1)の地図の道路及び目標物等の選択、記載方法と前記三、1、(4)記載の(2)の地図のそれとは相当程度類似していること、(1)の地図が「オートステージ」平成七年九月号に掲載され(2)の地図が「月刊カールック」平成八年三月号に掲載されたこと等を考慮すると、被告が(1)の地図を模倣して(2)の地図を作製した疑いを生ずる。
しかしながら、(1)の地図において道路を白抜きで表示しているのに対し、(2)の地図において道路を黒く表示していること、目標となる建物を表示するのに(1)の地図は丸印としているのに対し、(2)の地図は楕円形の印としていること(甲三の2、一四の5)を認めることができるのであって、(1)の地図と(2)の地図にある程度の相違がある。
元来、右各店舗の案内図は、道路、目標物等を記載して店舗の所在場所を示すものであるから、作製者が異なったとしても、ある程度類似のものとなることは避けられないところである。このことは、オートスポーツサムが作製したカタログ中の本社案内図に、本社の表示の他に東通り、W・ロード、秋田大学、手形陸橋、秋田銀行、とん太、関根屋、北郡銀行、横山金足線及び明田地下道の記載がある(乙二〇)ことを認めることができるのであって、右は原告作製の(1)の地図の右本社の案内図の記載と大同小異であることからも明らかである。
以上によれば、被告が(2)の地図のうち、オートスポーツサム本社の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないというべきである。
(5) アンフィニ秋田の本店、本荘店、能代店、大館店及び大曲店の案内図について(別紙一覧表(1)記載五の分)
右各店のうち本店、本荘店、能代店及び大館店案内図につき、被告が(2)の地図のうち、アンフィニ秋田の右各店の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないことは、前記(2)説示のとおりである。
右各店のうち大曲店の案内図につき、(1)の地図と(2)の地図とを対比すると、前記一、1、(6)記載の(1)の地図の道路及び目標物等の選択、記載方法と前記三、1、(3)記載の(2)の地図のそれとは相当程度類似していること、(1)の地図が「オートステージ」平成八年三月号に掲載され(2)の地図が「月刊カールック」平成八年四月号に掲載されたこと等を考慮すると、被告が(1)の地図を模倣して(2)の地図を作製した疑いを生ずる。
元来、右各店舗の案内図は、道路、目標物等を記載して店舗の所在場所を示すものであるから、作製者が異なったとしても、ある程度類似のものとなることは避けられないところである。このことは、アンフィニ秋田が平成六年七月七日付、同月一六日付及び同年八月二〇日付の秋田さきがけ新聞に掲載した広告中の右大曲店の案内図には大曲店の表示の他に国道一〇五号線、国道一三号線、至市内、至秋田、至本荘、至横手、デンコードー、ガソリンスタンド及びメイクの記載がある(乙一三の1ないし3)ことを認めることができるのであって、右は原告作製の(1)の地図の右大曲店の案内図の記載と大同小異であることから明らかである。また、被告が「月刊カールック」平成七年一一月号に右大曲店の案内図を掲載したのに対し、原告は「オートステージ」平成八年三月号に右大曲店の案内図を掲載した(「オートステージ」平成七年六月号に右大曲店の案内図は掲載されていない。)こと(甲一の3、五の2、一〇の3)を認めることができる。
以上によれば、被告が(2)の地図のうち、アンフィニ秋田の大曲店の案内図を「月刊カールック」に掲載したことによって、原告の(1)の地図の著作権を侵害したとはいえないというべきである。
四 結論
以上のとおり、原告の請求は理由がない。
(口頭弁論の終結の日 平成一〇年九月七日)
(裁判官 山野井勇作)